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ユーラシア大陸横断(酒の旅)
NASTAROVIA!
一人で酒を飲むことについて
この旅に出るまで、一人で酒を飲んだことはなかった。
全く、といえば嘘になるが、年に一度もない。酒を飲むのは、酒を飲みたいからではなく、酒を飲んでいるときの雰囲気が好きだからだ。
僕は酒をたくさん飲める。「うわばみ」とか「ざる」と言われることも多い。それゆえに僕のことをアル中じゃないかと思う方も少なからずいるようだが、事実はそうではない(はず)。
大学生の頃。
寒い季節で、鍋パーティが続いていた。毎日毎日飽きもせず鍋を囲み、ビールや焼酎、日本酒を飲んでいた。最高で一週間に六日も鍋をしたことがあり、あるとき友人が僕に言った。
「お前は酒なしでは生きていけないね」
それに対し僕は、
「俺が好きなのは酒じゃない。この雰囲気だ。友達がいて、話ができれば、そこにアルコールはいらない。置いてあるから飲んでいるだけだ」
このときの議論をもとにして、翌週、僕はお茶の会を開催した。世界各地から十数種類の茶葉を集め、僕の下宿で10人ほどが話し始めた。話題は多岐に亘り、酒盛りをしているときと同じかそれ以上の活気があった。しかも、酔いつぶれて眠ることはないので、参加者全員が明け方までハイテンションを続けるというものすごい「飲み会」となった。僕は「人は酒に酔うのではなく、自分達とその話に酔うのだ」ということを証明した。
こうした考えや経験があったため、僕は一人で酒を飲むことには強い抵抗があった。
今回の旅で。
僕は 6月14日、飛行機でラトビアのリガに到着した。初めてのヨーロッパである。石畳のある旧市街の様子はとてもエキゾチックで、とてもよい雰囲気だった。アジアとは全く違うその様子に驚き、なんだか作り物の世界にいるような感じすらした。
そんな雰囲気の中に、たくさんの屋外バーが存在した。それぞれの店にはステージがあり、そこで生演奏が行われていた。
ノリのいい英国系ロックに誘われて、ドームスクエアにある一軒のバーに僕は一人で入り込んだ。陽当りの良い席に腰を下ろすと、近くを通ったウェイターに威勢良くビールを注文した。
「ラトビアで一番うまいのをくれ!」
運ばれてきたビールは太陽の光を浴び、黄金色に輝いていた。
強い日差しの中を歩きつづけた後にそのバーに入ったため、僕は相当に喉が渇いていた。その黄金色の液体は言葉では言い尽くせないうまさであった。500ml入りのそのグラスが空になるまでには10秒もかからなかった。
すぐさま次のビールを注文した。すると横のテーブルから声がかかった。
「いい飲みっぷりだな。どこから来た?」
「日本だよ。ここのビールはうまいな!」
二杯目のビールが来ると、僕らはグラスをぶつけ合い、その後日本とラトビアに関するいろいろな話をした。話は尽きず、何杯かのビールを飲み終えたとき、僕はすっかりその街の雰囲気に溶け込んでいた。
ヨーロッパにいるとき、何度もこのような経験をした。酒を飲んでいるうちに、数多くの人たちと知り合うことができた。アジアを旅しているときは歩いているだけでたくさんの人が話し掛けてくるので、なにげなく過ごしているだけでも誰かと知り合うことができていたが、ここヨーロッパでは酒が、もしくは酒場の雰囲気が、人と人とをつなぐのである。
酒場で陽気に語り合いながらいろいろな人と知り合うことはとても面白い経験だった。
これらの経験を通して、僕は一人で酒を飲み始めることに慣れた。
しかし、決して一人で酒を飲みつづけることはなかったし、一人で酒を飲み終えることはなかった。

屋外のバーにて
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