AnotherWorldCup
2002夏:佐谷恭

救急車


 キルギスで救急車を呼んだ。

 キルギスに留学している面白い男Kさんに会い、興奮冷めぬまま宿泊していたサブルハウスに戻ると、玄関前の鉄製の踏み台が風化して折れた。サンダルを履いていた僕は、左足の親指を半分ぐらいまで切った。

 痛っ。

 なんてもんじゃない。怪我をした足だけではなく背中にかけて脳まで痛みを感じ、思わず叫んだ。しかも、鉄はかなり錆びていた。

 すぐにKさんとサブルハウスの住人が「救急車を呼ばなきゃ!」と言ってくれた。現地事情に詳しい人が近くにいてくれてラッキーだった。その時に聞かれたことは、

 「安いけど来るかどうか分からない救急車と、高いけどたぶん来る救急車どっちがいい?」

 「・・・」

 念のため「高いほう」を頼んでもらうと、「救急車は全部出動中で、行くことはできない」との返事が・・・。仕方がないので水道で傷口を洗い、バンドエイドのようなものを貼って安静にした。

 10分ほどすると、突然「赤十字の医者だ」と名乗るおばさんが現れた。僕の足から荒々しくバンドエイドを引っ剥がし、消毒液を塗りこみながら傷口を激しくもんだ。痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛いよ!彼女が言うには、「錆が入り込んでいるから、それを出すだめにとにかく強くもんで押し出せ」とのこと。

 痛さはさておき、キルギスでもちゃんと医者が来て処置をしてくれるんだなと感心していると、「呼び出し料350ソム、治療代50ソムで、合計400ソムです」と請求された。

 お金を支払おうとしたとき、財布には350ソムしか入っていなかった。おばちゃんは「じゃあ、350でいいわよ」。

 治療も済み、平静になっていた僕が「明日の食事代が必要だ」というと、結局250ソムにまで下がった。救急医でも値切れるキルギスが素敵。

 

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