ブラッドフォード大学大学院 体験記
(MA in Peace Studies, University of Bradford)

フセイン拘束


"Ladies and gentleman - we got him."

戦争開始から8ヶ月経って、サダムフセインが捕らえられた。イラクにいる米軍をはじめ、世界中がテレビを通じて大騒ぎしているように見える。
BBCでは朝から何度も僕のチューターのポールロジャースの電話インタビューが放送されイラクの一般市民にとっては「Good News」であるという見解が示されている。それでは、日本にとって、この拘束は「Good News」なのであろうか?

サダムフセインによる圧政が繰り返されることはないという意味では、彼の拘束を喜ぶイラク国民も数多くいることだろう。町には市民による祝砲が鳴り響き、跳び上がって喜ぶ人々の姿が見られたという。

イラク各地で住民らが喜びの声 (日経新聞)
 【バーレーン支局】「サダム(フセイン元大統領)が捕まった!」「新しい時代の始まりだ」。14日夕(日本時間同日夜)までにフセイン元大統領拘束の一報が流れたイラク各地では、一部住民が街頭に繰り出し、喜びの言葉を叫んだ。
 現地からの報道によると、夕暮れの首都バグダッドでは、ところどころに子供を含む数十人の市民の輪ができた。みな歓喜の表情で両手の拳を空に突き上げた。跳び上がって喜ぶ十数人の男性を乗せた小型トラックがゆっくりとロータリーを回り、駆け寄った人が握手を求める姿もあった。
 「パパーン」――。市民の祝砲とみられる銃声や、タクシー運転手らが鳴らすクラクションの音が同市内で散発的に響いた。渋滞が起きた地区もある。祝福の菓子が配られ、ラジオからは歓喜の音楽が流れた。日が落ちても、無数の自動車のヘッドライトが街を照らし、路上で手を取り合って踊る人々の姿が暗闇に浮かび上がった。 (00:42)

フセイン氏拘束: 「やっと平和がくる」バグダッドは歓喜の渦

 【バグダッド福島良典】フセイン元大統領拘束の知らせにバグダッドは14日、歓喜の渦に包まれた。住民は祝砲を上空に撃ち、車のクラクションを鳴らして拘束を祝い、「お前を捕まえたぞ」と雄たけびを上げた。
 バグダッド・カラダ地区では住民たちが太鼓を打ち鳴らし、「国民の英雄(フセイン元大統領)はどこにいる?」「ついにお前を捕まえたぞ」と歌い踊って、歴史的な日を祝福した。
 自由業のハッサン・サルマンさん(37)は91年の湾岸戦争で兄が戦死した。お祝いのチョコレートを歩行者に配り、「独裁者、ギャングの頭を捕まえたぞ。今日は世界中でイラクほど幸せな国はない。きっと平和がやってくる」と喜びを表現した。[毎日新聞12月15日] ( 2003-12-15-00:26 )

しかし、フセイン拘束により急に治安が回復するわけではない。イラク国内では今日も20人が死亡する「自爆テロ」が起こった。イギリスの政治家の中にも「フセイン氏からの拘束から自由になったことで米英軍への抵抗が国民運動化するかもしれない」と見る者もいる(ギャロウェー英下院議員)。日本政府は慎重なコメントしかまだ発表していないが、「治安に非常にいい影響があることを期待している」と述べている。こうした言葉がいつの間にか「治安は好転した」などとすりかえられないようによく見ておく必要がある。すでに「自衛隊派遣に有利な状況になっていく」との認識を示しており、今日のセンセーショナルなニュースを、自衛隊をイラクに派遣するためのカードとして使おうとしている。米軍がバクダッドに入城したとき、多くのイラク国民が歓喜しているというニュースがあったのをよく覚えておく必要がある。
フセインが拘束されたことのメリットはあるとしても、米軍が正当な理由もなくイラクを占領したことに変りはない。フセインは穴倉の中にいたようであるが、大量破壊兵器(WMD)の保管された穴倉が見つかったわけではない。

インド政府は14日に米軍から要請されていたイラクへの派遣見送りを決定した。その結果、米国から「私たちは異なる決定を望んだが、インドは引き続き、重要な戦略的パートナーだ」というメッセージを受け取ったらしい。日本は国連よりも日米同盟を重視するのか。そうしたところで「重要な戦略的パートナー」とみなされうるのか。アメリカとの関係が今までと変らないとして、自衛隊がアメリカの指示の下に「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」することによって、日本を敵視する国・人々が増えるというマイナス面はどのように考えられているのだろうか。

例えば、アラブの国々で「フセイン政権の終焉は喜ばしい」が、そのフセインを拘束したのがアメリカだということが面白くないと感じている人がたくさんいそうだ。自らの都合により「正義」の定義を変える国に従うことが、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」国のすべきことであろうか。

日本にとってサダムフセインの拘束が"good news"なのかかどうかは、現状では全く判断できない。


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