ビールと風車

出発前夜。エッセイの提出を祝して友人数人ですき焼を食べ、久しぶりにビールを飲んでいい気分で帰宅すると電話が鳴った。クラスメートのBinからだった。昼間に彼に会ったとき、彼は一週間の休みを利用してウェールズに行くと嬉しそうに話していた。
しかし、彼は行き先を変更したと言う。彼曰く、「バス高いし、俺も飛行機でアムス行くわ」(関西弁)。確かに、飛行機は安いからな。彼は行きが1ペニー、帰りが19ポンドでチケットを手に入れた。
突然、旅仲間ができた。このフットワークの軽さはさすが旅人という感じである。彼はアフリカをこよなく愛す。

アムステルダムのスキポール空港から列車で中央駅に着くと、別のクラスメートの友人である語り部氏に電話をし、迎えにきてもらった。試験前にも関わらず宿を提供してくれ、突然増えた来客にも一言の文句も言わず受け入れてくれた。こうした寛大さはさすが旅仲間である。彼は僕と同じようなところを旅したことがあり、僕も彼もウズベキスタンではマミーンという日本人相手に小遣い稼ぎをする怪しいおっさんに会ったことがある。

アムステルダムではこうして二人の旅人とともに楽しい時を過ごすことができた。旅仲間の良さは、似たような体験をいろいろな場所でしているため、語らずとも通じ合えるものがあることだ。人によってこだわりは違うものだが、頼るもののないところでトラブルに巻き込まれたり、それをなんとかこなしたり、ほっとして笑ったり、そういう共通体験があるからなのだろう。

アムステルダムではハイネケンアムステルにこだわった。ハイネケンの工場を訪れてビールについての勉強をし、いくつかのパブでビールを堪能した。スーパーにあったハイネケンとアムステルブランドのあらゆる種類のビールを買い、利きビールを楽しんだ。どちらのビールも今までそれほど好きではなかったのだが、アムステルダムで飲んだそれらは本当に美味かった。オランダの気候に絶妙にマッチしているのだと思う。イギリスとオランダの気候に違いがあるとは思えないのだが、帰国後この思い出とともにハイネケンを注文し、やっぱりあまり好きではないと思った。不思議なものである。やはり、ビールはその土地にあった味が追求されているのだろう。

出発前の天気予報は最悪だった。僕がヨーロッパにいる間、晴れないことになっていた。僕は天気予報が意にそぐわない時は信じないことにしている。旅行中は雨が降って欲しくない。だから傘は持っていかない。
「信じるものは救われる」という言葉がある。天候に関して、僕はこの言葉を強く信じている。そして、オランダでまた救われた。風車を見に行こうと決めていた二日目、起床して外を見つめると空が青かった。

風車で有名すぎるザンセスカーンスを訪れた。観光客用に整備されているらしいが、嫌味のない美しさだった。きっとユネスコの手がかかっていないからだろう。「オランダ=風車」のイメージ通りの光景だった。シーズンオフで観光客が少ないのも幸いだったと思う。冬のやわらかい光と澄んだ空気の中、水路の横の小道をどこまでも歩いた。

風車村には木靴やチーズの工場もあった。木靴の製造工程を見学し、その歴史を垣間見た。小さなチーズ工場のショップでは、十数種類の食べ放題チーズを堪能した。(ただし、Bin曰く、「食べ放題やなくて、試食を勝手に食べまくってるだけやん」。)こうして大満足でオランダを離れることになった。

>>がっかりと満足と

 

 

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