(株)旅と平和とパクチーハウス、開業事始
本日より、飲食店経営者の勉強会「飛ぶ個人飲食店経営者の会(飛部会)」は、その討議の模様をUstreamで生中継いたします。最初のうちは緊張するだろうし、議論も滞ることだろうが、徐々に慣れていきたい。そして、ほかの個人飲食店の経営者たちと意見を交換し、面白い店がたくさん生き残れる時代を作りたい。
以下、本日発表の資料。まだ体裁は決めていないのだが、いずれは討議内容を本にするということで、毎回テーマにそってA4一枚程度にまとめることを課題としています。(今回は2枚になってしまったが)
まず最初にコンセプトがあった。「旅人が平和を創る」。
これは自らが旅という経験を通じて得た実感。旅により視野を広げ、異文化と接触することで、旅人は世界と自分のホームグラウンドを変えうる存在であると思う。「旅の恥はかき捨て」られた時代は終わっている。行く前に情報収集ができ、行った先で偏見や思い込みを打破され、帰った後もコンタクトを取りやすい時代。旅先で一度できた関係は維持できるだけでなく、崩すことができない。
人のグローバルな移動が始まって以来、外国の珍しい商品をもたらしたりより安い製品を作らせる機能としての商社のような存在ができ、やがて、モノだけではなく、ホテルやレストランなどのサービスも国を超えて移動している。そして今、最も新しい「輸入業」として、楽しい空間やコンセプトをもたらしたいと思う。
異なる人との接触は、ポジティブな感情を生む。そのあり方は場合によって違うけれども、好奇心と相手への敬意を持つ者同士の交流には間違いがない。最初は警戒と緊張が入り混じるけれど、ほどなく打ち解けることになる。そしてそのポジティブな感情は伝播していく。
こうした実感を多くの人に伝えるべく始めたのが「株式会社旅と平和」。創業の目的に、次のような文章を書いた:
株式会社旅と平和は、旅という経験の積み重ねが国を超えた人びとの結びつきや相互理解を深め、世の中を楽しく、人びとを元気にすると考えます。また、その延長として、旅が世界平和を維持するための大いなる原動力となるという立場を支持しています。
「世界愛(人類愛)」には「祖国愛」を持たずして到達できず、「祖国愛」は「郷土愛」 を持たずして得ることはできません。また、「郷土愛」は「家族愛」があって初めて成り立ちます。私たちは、旅を「単なる外国への旅行」と捉えるのではなく、「人が自発的に、他人に会いに行くこと」であると定義します。
社名に「平和」という言葉を冠していますが、その崇高な目的のために地域の活性化や子どもの教育こそが、まず必要だと考えています。平和を維持し広めていく仲間を増やしていくためには、他者の存在とその必要性を認識できる旅という行為を広めることや、家族や地域などでのコミュニティー意識を多くの人が持つようになることが、重要になります。
株式会社旅と平和は、旅や家族・地域単位での交流を 促すさまざまな仕掛けを提供し、人とのつながりを見直す体験をすること、自分とは異なる世界観を持った人びとの存在を知ることを通じて、人をオープンで元気な存在にしていきます。そして、 自分以外の人のために生きる人たちを応援します。
新しい考え方を受け入れる際には、できるだけリラックスしていたほうがいい。僕は自分の考えを伝える手段として、パーティが手っ取り早いと思った。自分 の考えていることを伝え、その発言通りのことがその場所で「起こっている」ことをすぐに証明できるから。
初めて生まれる息子と同じ年の会社を作ろうと、起業を決意(2006年10月)してから約半年間、何からはじめるべきかずっと思い悩んでいた。でも、自 分のできることはパーティを開くことぐらい。だから、それにふさわしい店をいくつか探して、集客を請け負う代わりに月に数回パーティを開こうと思い立った。そして始めたのが飲食店の経営に関する勉強だ。
どこかの飲食店に提案書を作るつもりで読み始めた本は、どれも退屈だった。多くの店で感じた不満が解決されていなかった。旅先の屋台と日本のレストランの根本的な違いとでもいうべきか。儲かる方法に関する机上の空論が並んでいただけだからだ。そこにはコミュニケーションという発想はほとんどなかった。
そして2007年3月のある日、ふと「人のビジネスにのっかるよりも、自分でやるべきだな」と感じた。飲食店の経営を志したことはそれまで全くなかった し、経営どころか飲食業界で勤務したこともなかった。でも、その"思いつき"を、僕自身は相当気に入った。思いついてから30秒後には、ものすごい量の妄想が頭をよぎっていた。
飲食業の経験がないので、僕にはネタがパクチーしかなかった。日本パクチー狂会という半分冗談で始めた(2005年7月)コミュニティサイトが熱く盛り上がっていたからだ。それ以前よりずっと、"誰か"パクチーの店やればいいのにと思っていたし、伝えてもいた。でもそれに応える人は誰もいなかった。いざ自分でやると思い立ったら、話題性と食材としての面白さに、失敗することはありえないと確信できた。
やっと最初の事業が決まった。「来てくれた人が帰りにお金を支払ってくれる」この分かりやすい商売は、自分のアイデアでお金を稼いだ経験がなかった僕が最初に行う事業としてふさわしいとも思った。「お客さんが来なかったらどうするの?」とは、僕が突然飲食業を始めると聞いた誰もが発してきた質問だが、お客さんが来ないとすれば自分とその事業に魅力がないということだから、そうであればビジネスの世界から退場するだけの話だと思っていた。
日本パクチー狂会を作ったときに、パクチーのスペルに工夫を加えていた。僕の(2003年イギリス留学当時からの)テーマである「旅と平和」にこじつけるため、ラテン語の「pax」(平和)と「 i 」(旅人)を組み合せて「paxi」(パクチー)と読ませるようにしていたからだ。他人から見ると「唐突に飲食店なんか始めるみたいだ」と思われたかもしれないが、この造語によって僕のテーマ(旅と平和)と飲食業がつながった。
和食ではほとんど使われないパクチーは、それが好きか嫌いかという視点はどうでもよく、それを知るか知らないかという視点がきわめて重要だ。日本人に とってパクチーは、旅先や異文化交流で訪れたレストランで出会う野菜であり、それを知っていることは、そのような経験があるということ。飲食業の専門家や融資してくれる金融機関は、「知られていない野菜」をどうやって知らせるのかと問い詰めてきたが、知らない人は全くターゲットではなく、知った後に来てくれればいいと答えておいた。
飲食業開業を決意するまでの経緯は、相当特殊だと思う。僕にとって飲食業は、目的ではなく手段だ。だから、思いついてから意思決定までは30秒程度だ し、その当時の状況から、それをやる以外の選択肢はなかった。
まず、自分の考えを人に理解してもらえるよう、事業計画をまとめることから着手した。僕の事業は多くの人に理解され、協力してもらうことが不可欠なので、できるだけわかりやすく説明したいと思った。最初からたくさんの株主を集めようと思ったのも、自分の考えを独りよがりではなく、多くの人に理解・賛同 してもらいながら事業化したかったから。数値目標の入ったカタいものと、ビジュアルで分かりやすい資料をつくったのはそうした理由だ。
事業計画を作成するにあたって重視したのは、キーワード。「コリアンダー」「香菜」「シラントロ」などさまざまないい方があるにもかかわらず「パクチー」を選んだのは、この野菜が、「パクチー」と呼ばれたときに最も好かれ、嫌われているような気がしたから。これまでに何人も、「コリアンダーは好きだ けど、パクチーは食べられない」と言ってくれた人がいる。
会社名の「旅と平和」は、テーマをダイレクトに社名にしたもの。事業計画書の表紙に、はじめてその語を置いたときには違和感があったが、事業計画を書きながら、「万が一、資金が乏しくなったりして目的を失いそうな時、自らのテーマを社名にしておけば、いつまでも軸はブレないだろう」と思い、この名を決めた。また、メニュー名(追パク、ヤンパク、酸っパクスープ、パクパクピッグパクポークビッグパクパクパクポークなど)も、覚えやすく(または覚えたくなるように)語感のいいものを選ぼうと思った。全てのメニューは流行語にしたいという意気込みで名づけている。
パクチー料理という単語も然り。そういうジャンルは(以前は)存在しなかったが、パクチーハウス東京という場所を永続させるためには、パクチー料理の発 信拠点とすべきだと思った。世界中のパクチーが含まれる料理を「パクチー料理」と勝手に呼び始めることから始め、やたらとその単語を使い続けた。パクチー料理を「ここにしか存在しない料理」ではなく、家でも気軽にしょっちゅうつくる料理へと地位を高めるため、レシピをどんどん公開したいと思ったし、パクチー料理というジャンルを既成事実として確立させるために、自費出版でもよいのでレシピ本を作ろうとも思っていた(開業後、出版社との交渉がうまくいき、 開業10カ月後に実現)。
開業まで(そして開業後も)情報発信が最も重要だと思ってやっている。情報をほしがってもらえるよう、ある期間までは隠したりすることも含めて、考えられる限りの工夫をしてきた。
以下、本日発表の資料。まだ体裁は決めていないのだが、いずれは討議内容を本にするということで、毎回テーマにそってA4一枚程度にまとめることを課題としています。(今回は2枚になってしまったが)
2010年3月30日 飛部会発表資料
佐谷恭
佐谷恭
(1) 飲食店を経営しようと思ったきっかけや理由
まず最初にコンセプトがあった。「旅人が平和を創る」。
これは自らが旅という経験を通じて得た実感。旅により視野を広げ、異文化と接触することで、旅人は世界と自分のホームグラウンドを変えうる存在であると思う。「旅の恥はかき捨て」られた時代は終わっている。行く前に情報収集ができ、行った先で偏見や思い込みを打破され、帰った後もコンタクトを取りやすい時代。旅先で一度できた関係は維持できるだけでなく、崩すことができない。
人のグローバルな移動が始まって以来、外国の珍しい商品をもたらしたりより安い製品を作らせる機能としての商社のような存在ができ、やがて、モノだけではなく、ホテルやレストランなどのサービスも国を超えて移動している。そして今、最も新しい「輸入業」として、楽しい空間やコンセプトをもたらしたいと思う。
異なる人との接触は、ポジティブな感情を生む。そのあり方は場合によって違うけれども、好奇心と相手への敬意を持つ者同士の交流には間違いがない。最初は警戒と緊張が入り混じるけれど、ほどなく打ち解けることになる。そしてそのポジティブな感情は伝播していく。
こうした実感を多くの人に伝えるべく始めたのが「株式会社旅と平和」。創業の目的に、次のような文章を書いた:
株式会社旅と平和は、旅という経験の積み重ねが国を超えた人びとの結びつきや相互理解を深め、世の中を楽しく、人びとを元気にすると考えます。また、その延長として、旅が世界平和を維持するための大いなる原動力となるという立場を支持しています。
「世界愛(人類愛)」には「祖国愛」を持たずして到達できず、「祖国愛」は「郷土愛」 を持たずして得ることはできません。また、「郷土愛」は「家族愛」があって初めて成り立ちます。私たちは、旅を「単なる外国への旅行」と捉えるのではなく、「人が自発的に、他人に会いに行くこと」であると定義します。
社名に「平和」という言葉を冠していますが、その崇高な目的のために地域の活性化や子どもの教育こそが、まず必要だと考えています。平和を維持し広めていく仲間を増やしていくためには、他者の存在とその必要性を認識できる旅という行為を広めることや、家族や地域などでのコミュニティー意識を多くの人が持つようになることが、重要になります。
株式会社旅と平和は、旅や家族・地域単位での交流を 促すさまざまな仕掛けを提供し、人とのつながりを見直す体験をすること、自分とは異なる世界観を持った人びとの存在を知ることを通じて、人をオープンで元気な存在にしていきます。そして、 自分以外の人のために生きる人たちを応援します。
新しい考え方を受け入れる際には、できるだけリラックスしていたほうがいい。僕は自分の考えを伝える手段として、パーティが手っ取り早いと思った。自分 の考えていることを伝え、その発言通りのことがその場所で「起こっている」ことをすぐに証明できるから。
初めて生まれる息子と同じ年の会社を作ろうと、起業を決意(2006年10月)してから約半年間、何からはじめるべきかずっと思い悩んでいた。でも、自 分のできることはパーティを開くことぐらい。だから、それにふさわしい店をいくつか探して、集客を請け負う代わりに月に数回パーティを開こうと思い立った。そして始めたのが飲食店の経営に関する勉強だ。
どこかの飲食店に提案書を作るつもりで読み始めた本は、どれも退屈だった。多くの店で感じた不満が解決されていなかった。旅先の屋台と日本のレストランの根本的な違いとでもいうべきか。儲かる方法に関する机上の空論が並んでいただけだからだ。そこにはコミュニケーションという発想はほとんどなかった。
そして2007年3月のある日、ふと「人のビジネスにのっかるよりも、自分でやるべきだな」と感じた。飲食店の経営を志したことはそれまで全くなかった し、経営どころか飲食業界で勤務したこともなかった。でも、その"思いつき"を、僕自身は相当気に入った。思いついてから30秒後には、ものすごい量の妄想が頭をよぎっていた。
飲食業の経験がないので、僕にはネタがパクチーしかなかった。日本パクチー狂会という半分冗談で始めた(2005年7月)コミュニティサイトが熱く盛り上がっていたからだ。それ以前よりずっと、"誰か"パクチーの店やればいいのにと思っていたし、伝えてもいた。でもそれに応える人は誰もいなかった。いざ自分でやると思い立ったら、話題性と食材としての面白さに、失敗することはありえないと確信できた。
やっと最初の事業が決まった。「来てくれた人が帰りにお金を支払ってくれる」この分かりやすい商売は、自分のアイデアでお金を稼いだ経験がなかった僕が最初に行う事業としてふさわしいとも思った。「お客さんが来なかったらどうするの?」とは、僕が突然飲食業を始めると聞いた誰もが発してきた質問だが、お客さんが来ないとすれば自分とその事業に魅力がないということだから、そうであればビジネスの世界から退場するだけの話だと思っていた。
日本パクチー狂会を作ったときに、パクチーのスペルに工夫を加えていた。僕の(2003年イギリス留学当時からの)テーマである「旅と平和」にこじつけるため、ラテン語の「pax」(平和)と「 i 」(旅人)を組み合せて「paxi」(パクチー)と読ませるようにしていたからだ。他人から見ると「唐突に飲食店なんか始めるみたいだ」と思われたかもしれないが、この造語によって僕のテーマ(旅と平和)と飲食業がつながった。
和食ではほとんど使われないパクチーは、それが好きか嫌いかという視点はどうでもよく、それを知るか知らないかという視点がきわめて重要だ。日本人に とってパクチーは、旅先や異文化交流で訪れたレストランで出会う野菜であり、それを知っていることは、そのような経験があるということ。飲食業の専門家や融資してくれる金融機関は、「知られていない野菜」をどうやって知らせるのかと問い詰めてきたが、知らない人は全くターゲットではなく、知った後に来てくれればいいと答えておいた。
飲食業開業を決意するまでの経緯は、相当特殊だと思う。僕にとって飲食業は、目的ではなく手段だ。だから、思いついてから意思決定までは30秒程度だ し、その当時の状況から、それをやる以外の選択肢はなかった。
(2) 開業しようと思いまず何から具体的にやっていったのか
まず、自分の考えを人に理解してもらえるよう、事業計画をまとめることから着手した。僕の事業は多くの人に理解され、協力してもらうことが不可欠なので、できるだけわかりやすく説明したいと思った。最初からたくさんの株主を集めようと思ったのも、自分の考えを独りよがりではなく、多くの人に理解・賛同 してもらいながら事業化したかったから。数値目標の入ったカタいものと、ビジュアルで分かりやすい資料をつくったのはそうした理由だ。
事業計画を作成するにあたって重視したのは、キーワード。「コリアンダー」「香菜」「シラントロ」などさまざまないい方があるにもかかわらず「パクチー」を選んだのは、この野菜が、「パクチー」と呼ばれたときに最も好かれ、嫌われているような気がしたから。これまでに何人も、「コリアンダーは好きだ けど、パクチーは食べられない」と言ってくれた人がいる。
会社名の「旅と平和」は、テーマをダイレクトに社名にしたもの。事業計画書の表紙に、はじめてその語を置いたときには違和感があったが、事業計画を書きながら、「万が一、資金が乏しくなったりして目的を失いそうな時、自らのテーマを社名にしておけば、いつまでも軸はブレないだろう」と思い、この名を決めた。また、メニュー名(追パク、ヤンパク、酸っパクスープ、パクパクピッグパクポークビッグパクパクパクポークなど)も、覚えやすく(または覚えたくなるように)語感のいいものを選ぼうと思った。全てのメニューは流行語にしたいという意気込みで名づけている。
パクチー料理という単語も然り。そういうジャンルは(以前は)存在しなかったが、パクチーハウス東京という場所を永続させるためには、パクチー料理の発 信拠点とすべきだと思った。世界中のパクチーが含まれる料理を「パクチー料理」と勝手に呼び始めることから始め、やたらとその単語を使い続けた。パクチー料理を「ここにしか存在しない料理」ではなく、家でも気軽にしょっちゅうつくる料理へと地位を高めるため、レシピをどんどん公開したいと思ったし、パクチー料理というジャンルを既成事実として確立させるために、自費出版でもよいのでレシピ本を作ろうとも思っていた(開業後、出版社との交渉がうまくいき、 開業10カ月後に実現)。
開業まで(そして開業後も)情報発信が最も重要だと思ってやっている。情報をほしがってもらえるよう、ある期間までは隠したりすることも含めて、考えられる限りの工夫をしてきた。

コメント[2]
昨夜はごちそうさまでした!
僕も起業を目指して今月からフリーランスになりました。
「人を繋げるデザイン」をかたちにしたいと考えています。
まだビジネスモデルは模索中ですが、
佐谷さんの起業のプロセスが非常にいい参考になりそうです。
これからも贔屓にさせていただきます!
Posted by 伊藤謙二 at 2010年4月 1日 07:22 | 返信
No.1074の伊藤謙二さんのコメントへの返信
伊藤さん、コメントありがとうございます。
まさに今日からフリーランスなのですね。
新しい門出に乾杯したいと思います。
昨日も、今日も、おめでたいこと続きですね。
さて、お互いの自宅も近いようですし、また
お話できればうれしく思います。昨日ご紹介
してませんが、店内で知り合った中に非常に
面白い方々がいたので、またいずれつながる
かもしれません(twitterではすでにつながっている
かもしれませんが)
では、今後ともよろしくお願い申し上げます。
Posted by beemanet
at 2010年4月 1日 09:55 | 返信
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